同志社大学商学部 高橋広行 研究室

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『小売業態の誕生と革新』中田信哉著

生命の誕生とその進化に関する研究と小売業態の関連性を見いだそうとしながら,楽しく業態に関する研究を紹介してくれている本である。引用としての書籍ではなく,大衆消費と共に発展して来た商売のあり方である業態の誕生と動態的変化の部分について触れている。

この著書の最後で,業態生成・育成といった進化(小・中・大進化)のプロセスに関する研究,そして業態の芽となる要因の探求がなされていない点を指摘されている。 現在,私が取り組んでいる業態研究(消費者視点の業態認識と消費者価値として受容される業態の「芽」)に取り組んでいるが,まさにこの著書が求めている点を明らかにしようとしている。研究の方向性は間違っていないと感じた。

何を売るかが業種,どのように売るかが業態と一般的に考えられてきたが,もっと大きな違いとして標準化したチェーンオペレーションの有無というのが大きな差なのだろうと感じた。売り方が確定する=コンセプトが出来る=システム化する=チェーンオペレーション(CO)という図式であろう。

現在,研究でいくつかの事例を見ているが,業績を伸ばしている企業はこのチェーンオペレーションといった近代化・効率化に対するアンチテーゼの方針を持っており,それが洗練されて行くと新業態に向かうのかもしれない。